ベナケバシンドローム(VCS,別名;大静脈症候群)
本来,フィラリアの成虫は肺動脈内に寄生します。しかし,何らかの原因によりフィラリア虫体が右心室から右心房,さらには後大静脈へと移動し,三尖弁閉鎖不全症による急性心不全を合併することがあります。この病態をベナケバシンドローム(VCS,別名;大静脈症候群)と呼びます。ひとたびVCSを発症すると溶血性貧血やそれに伴う血色素尿症(赤黒い尿)が認められるようになり,安静時においても呼吸の異常(努力性呼吸,空咳,時に喀血)や元気食欲の消失が認められるようになります。VCSを発症した場合には,速やかに外科的な虫体摘出手術を実施しない限り,多くの場合,急激に病状が進行し,2~3週間以内に多臓器不全で死亡してしまいます。フィラリアの予防がなされていない場合やすでにフィラリアに感染している犬において,このような症状が認められた場合には直ちに診察を受けて下さい。